西三数学サークル通信41号

ランチェスターの法則・・・・・・・・・・・・・・・山田(知立高校)

 山田先生がサークルで口頭で発表された内容をもとに、インターネットで調べてみました。
ランチェスターの法則は、イギリスの航空工学のエンジニア、F.W.Lanchester(1868〜1946)
が第一次世界大戦の空中戦のデータを解析して提案した理論です。ランチェスターの法則
には一次法則と二次法則の2つあり、それぞれ、頭の理屈で数学モデルを作った後、実戦
のデータでその正しさを検証したものです。
ランチェスターの一次法則
 X軍とY軍が戦います。兵士の数はX軍がx0 , Y軍がy0 とします。戦いの原則は一騎打ち
で、Y軍の兵士1名が戦死するごとに、X軍の兵士がE名戦死したとします。
 ある時間が経過した後、X軍の人数をx、Y軍の人数をyとすると、
 X軍の戦死者の数=x0−x、Y軍の戦死者の数=y0―yですがX軍の戦死者数はY軍のE
倍であるから、x0−x=E(y0―y)
ランチェスターの二次法則
二次法則はチーム戦です。x名のX軍とy名のY軍が戦います。Y軍の銃はX軍の銃のE倍の
弾を発射出来るものとする。戦いの短い時間の間にX軍の人数はdxだけ減り、Y軍の
人数はdyだけ減るとする。dxはY軍から飛んでくる弾数に比例し、その弾数はY軍の人数の
E倍に比例するから、
 −dx=kEy(kは比例定数)・・・@
また、dyはX軍から飛んでくる弾数に比例し、その弾数はX軍の数に比例するから
−dy=kx・・・A 
ここで、Aを@で割ると、
dy/dx=x/Ey  従って、xdx=Eydy
両辺を積分して 
x2=Ey2+C(Cは積分定数)
戦いが始まる前の両軍の人数をx0 , y0 とすると、
C=(x0)2−E(y0)2
となるから、
(x0)2−x2=E{(y0)2−y2}・・・B
Bはランチェスターの2乗法則と呼ばれるもので、企業戦略にも用いられている。

 「長沼伸一郎presentsパスファイダー物理学(http://pathfind.motion.ne.jp)」には式を使わ
ずにランチェスターの2乗法則が説明されているので、紹介します。
 今、全く同一の性能の戦艦からなる青軍、赤軍の艦隊が並んで撃ち合うことを考える。最
初、青軍が10隻、赤軍が6隻で射撃を始め、赤軍が全部沈むまで戦闘が続いたとするなら
ば、青軍の側は何隻残るだろうか。
 青軍、赤軍の各艦が、1隻あたり30発の砲弾を発射したとして、その全弾が相手側に等分
に命中したとする。この場合、青軍10隻が発射した砲弾の総数は30×10=300発、赤軍6隻が
発射した砲弾の総数は30×6=180発である。各艦が何発被弾したかを見ると青軍は1隻あ
たり180÷10=18発、赤軍は1隻あたり300÷6=50発となる。
この青軍と赤軍の被弾の比 18:50は62:102の比に等しい。すな

なぜ、両艦隊は、互いに相手の1艦に集中攻撃するか?

 ランチェスターの法則のシュミレーションです。
全く同一の性能の艦隊からなる白丸艦隊○と黒丸艦隊●が並んで撃ち合うことを考える。
白丸艦隊○は5隻、黒丸艦隊●は4隻が向かい合って、全部沈むまで戦闘が続いたとする。
1隻あたり20発の被弾で沈没とする。

@ 白丸艦隊、黒丸艦隊ともに全部へ攻撃
1回目の攻撃で白軍の被弾は各隻4/5発 、  16回目の攻撃で白軍の被弾は各隻64/5発、
黒軍の被弾は各隻5/4           黒軍の被弾は各隻20発だから全隻沈没
○ ○ ○ ○ ○            ○ ○ ○ ○ ○

                                    
   ● ● ● ●              × × × ×

A 白丸艦隊は1隻ずつ集中攻撃、黒丸艦隊は全部へ攻撃
1回目の攻撃で白軍の被弾は各隻4/5発、  2回目の攻撃で白軍の被弾は各隻8/5発
左端の黒軍の1隻の被弾は5発 左端の黒軍の1隻は沈没
○ ○ ○ ○ ○            ○ ○ ○ ○ ○


● ● ● ●              × ● ● ●

4回目の攻撃で白軍の被弾は各隻14/5     8回目の攻撃で白軍の被弾は各隻20/5
発、黒軍は2隻目が沈没           発、黒軍は全隻沈没
○ ○ ○ ○ ○             ○ ○ ○ ○ ○


   × × ● ●                × × × ×

B 白丸艦隊は1隻ずつ集中攻撃、黒丸艦隊も1隻ずつ集中攻撃

1回目の攻撃で左端の白軍の1隻の被弾    2回目の攻撃で左端の白軍の1隻の被
は4発、左端の黒軍の1隻の被弾は5発     弾は8発、左端の黒軍の1隻は沈没
○ ○ ○ ○ ○              ○ ○ ○ ○ ○


 ● ● ● ●                × ● ● ●

3回目の攻撃で左端の白軍の1隻は沈没    10回目の攻撃で白軍は2隻は沈没
左端の黒軍の1隻の被弾は5発        黒軍は全隻沈没
 × ○ ○ ○ ○               × × ○ ○ ○


  × ● ● ●                  × × × ×
 お互い1隻ずつ集中攻撃すれば、白軍が 隻残る。

C 白丸艦隊は全部へ攻撃、黒丸艦隊は1隻ずつ集中攻撃
1回目の攻撃で白軍の左端の1隻の被     5回目の攻撃で白軍は1隻は沈没
弾は4発、黒軍の被弾は各隻5/4発       黒軍の被弾は各隻25/4発
○ ○ ○ ○ ○              × ○ ○ ○ ○


  ● ● ● ●                 ● ● ● ●

10回目の攻撃で白軍は2隻目が沈没   25回目の攻撃で白軍は全隻沈没
黒軍の被弾は各隻45/4発           黒軍の被弾は各隻75/4発
 × × ○ ○ ○               × × × × ×


  ● ● ● ●               ● ● ● ●

 このことから、全隻へ均等に攻撃するのでなく、1隻ずつ集中攻撃した方が良いこと
がわかる。また、この法則が成り立つとすれば、一億人の国民がバラバラならば、1万
人の軍隊で治めることが出来る。
 サークルでは、『40人のクラスでは、6人が団結すれば、クラスをまとめることができる』、
『受験勉強も多教科をまんべんなく取り組むのではなく、1教科ずつ取り組んだ方が効果
的である』といった意見が出されました。

おもちゃ『屋台のとおる町』・・・・・・・・・中村(刈谷高校)

 下左の画像は「Do nothing」というおもちゃで、取っ手の部分を回転させるとスライダーの
部分が溝に沿って左右、上下に移動します。そして、取っ手の部分は楕円を描きます。
 下右の画像はスライダーの上に屋台が載っている高山のおみやげです。