通信案内に戻る メニュに戻る

西三数学サークル通信138号

 

西三数学サークル 春の合宿研究会開かれる

 3月8日(土)、9日(日)に蒲郡荘において西三数学サークル春の合宿研究会が開かれた。参加者は31名
(県外からは和歌山、東京、大阪、京都、福井、岐阜、長野から10名)でした。

講演「心にストンと落ちる数学を目指して~教材・教具開発秘話~」
講師 阪田 裕二氏(和歌山県立貴志川高校教諭)
 講師の阪田氏は大学卒業後、和歌山県の県立高校で30年勤務されているベテランの教員です。
 現在は近畿地区数学教育協議会の事務局長(2006年~)をされており、「数学教室」(国土社)に
 は毎年教具を中心とした実践報告をされています。

【教具を使う目的】
1 理解を助ける
・言葉や図では説明しにくいものは、実物を見せる(百聞は一見にしかず)
 ・イメージを具象化する(具体物を見せることにより、イメージが定着する)
 ・本当か確かめる 実験・実演(理屈ではそうでも、本当? 理論→実演)
  頭の中でもやもやしているもの ⇒ 心にストンと落ちる
2 興味を引き付ける
 ・教具を見て、なぜか考える(確かになっている、なぜ? 実演→理論)
頭の中でもやもやしているもの ⇒ 心にストンと落ちる
 ・遊戯要素を取り入れる
   パズル的な要素・・・数列のキューブ、三平方の定理の裁ち合わせ、等
   ゲーム的な要素・・・ハノイの塔、石とりゲーム、数あてゲーム、等
3 学習を印象づける
 ・教科書と黒板だけの授業に変化をつける
 ・作業を取り入れる・・・折り紙、確率の実験
4 使うと便利な道具・・・算盤、計算尺、コンピュータソフト、等

 阪田氏の考える“よい教具”とは
1 イメージを具象化する教具
2 「なぜ?」を呼び起こし、「本当?」を納得させる教具
3 Simple is best
 ・仕掛けの複雑な教具は生徒に余計な混乱をおこす→教師の自己満足
4 手作りの教具・・・生徒との距離が縮まる

 阪田氏が“教材づくり”で心がけていること
1 数学を身近に感じることができる教材
 ・身近な生活の中に題材を求める
 ・抽象的なものよりも、具体的なもの
 ・演繹よりも帰納
 ・量を大切にする
2 実用性が感じられる教材
 ・無駄なものではなく、役立つものを学習していると思える
3 必然性が納得できる教材
 ・「なぜ、それを考える必要があるのか?」が納得できる
4 感動が体験できる教材
 ・些細なことでも感動できる
 ・「なるほど」と思える
 ・頭で理解して、心で感じる

 

ミニ講演 

①「一高校数学教員の授業」(中村  章氏 岡崎北高校)

 笑顔で過ごせる場所の順位は ①テニスコート ②教室 ③職員室という中村先生から若い先生方への
渾身のメッセージ。
 生徒から「一生懸命伝えようとしている心に“あ―、やっぱ「あきら」好き!”って思いましたよ!数学が苦
手で、あんまり教科書とか読んで理解できるタイプじゃないけど、先生の“おまじない”活用してましたよ!
ちょっと良い点数とれたとき、先生がほめてくれたのすっごくうれしかったです ♡ 先生に癒されてました。
大好きだよ!」また、同僚の教員から「先生は廊下を歩くとき、まっすぐ歩かないね、あっちの生徒、こっち
の生徒に楽しそうに話しかけ、話しかけられ、みだしなみの指導をしても生徒が寄ってくる、うらやましい。」
と慕われている中村先生の心優しい講演でした。
 中村先生の授業プリント、生徒の感想、同僚教員からのメッセージ、そして、手作りの教具を紹介した
冊子「一高校教員の数学の授業±α(その2)」は500 円で西三数学サークルにて取り扱っています。

②「サークルで学んだこと」(齋藤 敏光氏 武豊高校)

 「巨人の完全試合投手 槇原の(テスト)監督をしたことがある」というユーモアを交えた話から百均の健康
器具を入試のおまじないや組合せの教具に替えてしまう笑いの中に事の本質を突く斎藤氏の話術に時間
が経つのを忘れてしまう。映画館や大須演芸場で話術を学んだという斎藤氏の話術は本物でした。


 ↑中村先生                        ↑齋藤先生

 春の合宿研究会 2日目

 3月9日(日)の午前9時~12時まで10本の研究発表が行われました。  
①放水放物線と円錐(和田 小諸商業高校・長野県) ② 平面図形の研究ポスター作り
(中山 同志社中学・京都府)③ フレーベルの模様折り(斎藤 西三数学サークル) 
④ 紙工作でフラクタル図形を作ろう(大西 龍谷大学・滋賀県) ⑤ 実験を取り入れた
面白い実験(太田 新城東高校) ⑥ お寺にもサイクロイドがある(鈴木 国府高校) 
⑦ 立体模型(松崎 こどもの森学園 大阪府) ⑧ n進法(吉川 飛騨神岡高校・岐阜)
⑨ 目付絵(伊禮 福井大学・福井県) ⑩ 皮むき多面体(阿竹 阿竹研究所)


          ↑①                          ↑②                      ↑③

       ↑④                         ↑⑤                       ↑⑥

          ↑⑦                         ↑⑧                    ↑⑩

研究発表  目付絵・・・・・・・伊禮(福井大学)

 作り方
① 大きな円盤が直径15cm程度になるように拡大し、
  ケント紙や画用紙にコピーする。
② 大小の円盤を切り抜いて、中心を重ねる。
③ 中心に穴を開け、足割りリベット(※)を通し、小さい
  円が回転できるようにする。
※(株)八幡ねじのNO-2 は一袋(約20個)が105円です。
遊び方
① マジシャンは、後ろを向いて円盤を見ないようにします。
② 相手に、小円盤を回転してもらい、適当な所で止めても
  らいます。
③ 相手に、小円盤の数の中から好きな数を決めてもらい
  ます。(例えば、5)
④ その数字が示している動物(例えば、コアラ)から、その
  数の分だけ時計回りに進んだ動物(この場合は、ライオ
  ン)を覚えてもらいます。
⑤ 相手が「覚えました」と言ったら、マジシャンは円盤を見
  て、即座に「覚えた動物はライオンですね」と当てる遊び
  です。
解説
 円盤は12等分されています。小円盤に書かれている数
 に着目して、12で割った余りを見てみましょう。
 すると、(mod12)
   24≡0 13≡1 14≡2 3≡3 16≡4 5≡5
  18≡6 7≡7 20≡8 9≡9 22≡10 11≡11
 となっていて、0から11までの数が反時計回りに並んでい
 ることが分かります。相手は、自分が決めた数の分だけ
 時計回りに進みますから、どの数を選んでも必ず24≡0
 の所に着きます。つまり、24の所にいる動物が相手が覚
 えた動物だというわけです。
 参考 「和算 THE WASAN」(佐藤健一 文溪堂)
 

     通信138-2へ