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西三数学サークル通信131号

「算勘の事」・・・・・・・・・・・・・・・・竹中

 豊田市足助町にNPO法人「体育とスポーツの図書館」が
あります。国内では初めての体育とスポーツ及び健康教育
に関する専門図書館で2010年2月にオープンしました。
 そこの責任者である成瀬さんから近所の人で蔵を整理し
ていたら、数学書らしき書き物が出てきたという電話をいた
だいたので、送っていただくようお願いをした。それは虫食
いだらけの墨で書かれた書き物で表紙には「算勘の事」と
書かれている。1ページ目には「二〃四、二三六、・・・、
九〃八十一」と私たちが普段使う九九が書かれているが、
2ページ目から6ページ目までは「二一天作五、二進一十、
三一三十一、・・・、九進一十」と見慣れぬ数字が書かれて
いる。そこで、インターネットを使って調べたところ、“算勘”
とは算盤のことで、「二一天作五、二進一十、三一三十一、
・・・、九進一十」は戦前まで使われていた「割り算九九」で
あることが分かった。
 珠算による割り算の方法は現在、筆算で使われている掛
け算九九を使う商除法と、割り算九九を使う帰除法がある。
帰除法は割り算九九を覚えれば、商をいくつにするか考えず
に機械的に出来る方法で、江戸時代の初期に書かれた毛
利重能の割算書(1622年初版)や吉田光由の塵劫記(1627
年初版)などに紹介されており、だれもがそろばんを使って
早く正確に計算出来たので江戸時代に爆発的に普及した。
明治政府は小学校の算術における計算を筆算と決めたが、
地域によっては珠算を指導することを可としたため、筆算と
珠算を指導する学校が多くあった。その後、昭和12年に文
部省は珠算による加減乗除を小学校の必須科目にしたが、
同時に、そろばんによる除算を商除法によると決めたため、
商業学校や珠算塾における除算指導も商除法に切り替わ
った。さらに、戦後は、占領軍の政策で小学校においてそろ
ばんの指導がされなかったため、そろばんにおける帰除法
は廃れていった。
 
割り算九九
@ 割り切れる場合は「割る数、割られる数、商」の順に並
 ぶ。
「二一天作の五」とは、10÷2=5 のことである。
A 割り切れない場合は 「割る数、割られる数、商、余り」
の順に並ぶ。
「三二六十二」とは、20÷3=6 余り2 のことである。
※ 割り算九九は1で割る場合を除いて、8通りの割り算とし
たことから“八算”とも呼ばれた。また、八算の最初の言葉から
“二一天作五”で八算全体を表すこともある。
 「割り算九九」の計算例


↑「算勘の書」

 ↑「塵劫記」

面白い数の計算・・・・・・・・・・・・・・・広田


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