西三数学サークル通信114号
正方形引き算とドゥッチ数列・・・・・・・・・・・・水谷
「数学教室」(国土社)2012年 4月号に市川良先生が、 “正方形引き算”という授業プリントが紹介されている。 【やり方】(右図を参照) 1.正方形の各頂点に任意の数を置く。 2.隣り合う数どうしを引いてその絶 対値を隣り合う頂点の中点に置く。 3.その中点を新たな正方形の頂点と し、同様の計算を行う。 4.以上の事を繰り返す。 |
【正方形の場合結果は常に0となる】
実は正方形の場合、任意の正の整数を置いても常に最終的に0となる事が数学
的にも証明されている。(「数学教室」6月号
木村良夫先生の投稿参照)
その後、野崎昭弘先生とともに正方形をN角形に拡張したらどうなるだろうか
という拡張について共同研究を着手した。
実はこうした発想は19世紀にイタリアの数学者E.
Ducciがこの正方形引き算
の元となる問題を作り、それ以降N角形に拡張された場合を含めてこの引き算に
よってできる数列はドゥッチ数列と呼ばれている。更に「必ずいつかはオール0
になる」のはNが2のべき乗の場合である事が昔から知られており、その事を証
明する多くの論文も書かれてきている。(実際に証明されたのかは不明)。
一方でNが8や16のような4以上のより大きな2のベキ乗となってくると、
「いつかは終わる」といっても「いつ終わるか」がはっきりとしない。そこで面白
い条件を課すことによって次の予想が生まれた。
予想 Nが(4,
8, 16など)2のベキ乗で、かつ隣り合うどの3つの頂点 の数A, B, Cも、どの再帰計算においても必ず A≦C≦B, A≧C≧B, B≦A≦C, B≧A≧C のいずれかであれば、整数から始めるN角形引き算は、Nステップまでに 必ずオールゼロになる。 |
N角形の頂点に対して正の整数(あるいは実数)a1,
a2, a3,…,an-1, anを順序付け、 隣り合う頂点の数値の差である二項演算の絶対値を[an-1, an] と表す(つまり|an-1 −an|)。 そして次に同じ計算を繰り返すと、例えばa1, a2, a3の場合は|a1 −a2|-|a2−a3|となる わけだが、ただしこの式を展開した値はa1, a2, a3の値によって違ってくる。そこで以 下のような場合分けをする。 多角形の連続した三つの頂点の値をA, B, Cとすれば、このドゥッチ数列の再帰式 は常に以下の3つの場合に分類できる。 i). もし A<B<Cならば, |(B-A)-(C-B)|=|-A+2B-C| ・・・(1) ii). もし A>B>Cならば、 |(A-B)-(B-C)|=|A-2B+C| ・・・(2) iii). もしA≦C≦B, A≧C≧B, B≦A≦C, B≧A≧C ならば((注) A,B,Cの円順列の組み合わせ より、この不等号の関係式はi), ii)の場合を含めて合計6通り)、これは常に引き算 の結果がマイナスには絶対ならないという性質から(そのためオリジナルは辺の長さの 引き算としている)、この場合のみ全て、 |(A-B)-(B-C)|=|A-C|=|C-A| ・・・(3) 現在のところ、N=2,3,5,6,7のときは、循環して0にはならない。 N=4,8,16のときは予想が正しい事が確認できている。 |
積み木と調和級数・・・・・・・・・・・・・斎藤